オイルを浄化できる超高性能ろ過フィルターを開発
ナノ細孔中の高速粘性透過を世界に先駆けて実証
独立行政法人物質・材料研究機構
独立行政法人 科学技術振興機構
先端的共通技術部門 高分子材料ユニットの研究者らは、有機溶媒に耐性のある極薄の多孔性カーボン膜を開発し、従来のろ過フィルターと比較して、不純物の除去速度を約3桁向上させることに成功した。
概要
- 独立行政法人物質・材料研究機構(理事長:潮田 資勝)先端的共通技術部門 高分子材料ユニット(ユニット長:一ノ瀬 泉)の分離機能材料グループの研究者らは、中核機能部門 電子顕微鏡ステーションとの共同で、直径約1ナノメートルの細孔をもつ極薄の多孔性カーボン膜を開発することに成功した。
- 耐有機溶媒性のろ過フィルターは、超低硫黄ディーセル油の製造、オイルサンド開発における排水処理プロセス、化学工業における溶媒の再利用などに、期待がかけられている。しかしながら、従来のろ過フィルターは、酸・アルカリ、加熱などにより劣化しやすく、細孔径が1ナノメートル程度のフィルターでは、水以外の溶媒を透過させることが困難であった。
- 今回の研究では、高強度のカーボン膜を形成させることで、約35ナノメートルの薄さでも優れた力学的強度を有するろ過フィルターを作製することに成功した。カーボン膜の内部には、直径約1ナノメートルの流路が無数に形成されており、有機溶媒を超高速で透過させることができる。オイルの1成分であるヘキサンの透過速度は、230 L/ h·m2·barを超えており、不純物のモデル物質として用いたアゾベンゼン(分子量:182.2)の阻止率は90%以上であった。この処理速度は、同等の性能の市販のフィルターと比較して、約3桁大きい。
- 有機溶媒が配管中を流れる場合、その速度は溶媒の粘度に反比例して増大する。即ち、粘度が低い有機溶媒ほど配管中を速く流れる。今回の研究では、直径1ナノメートルという極小の流路においても、このような粘性透過が確認されることが分かった。分子スケールの流れが、粘性という巨視的な物性と関連していることは、驚くべき事実である。
- 今回の成果は、JST-CREST「ナノ界面技術の基盤構築」研究領域(研究総括:新海 征治)の研究課題「界面ナノ細孔での液体の巨視的物性の解明」(研究代表者:一ノ瀬 泉)においてられた。なお、本成果は、平成24年1月27日発行のScience誌(AAAS、アメリカ)に掲載されている。
(論文:S. Karan, S. Samitsu, X. Peng, K. Kurashima, I. Ichinose “Ultrafast Viscous Permeation of Organic Solvents Through Diamond-Like Carbon Nanosheets” DOI: 10.1126/science.1212101)

プレス資料中の図1.高性能ろ過フィルターの模式図。 有機溶媒(トルエン)は、35 ナノメートルの薄さのカーボン膜(DLC layer)を高速で透過するが、不純物のモデル物質(アゾベンゼン)は、膜により阻止される。このカーボン膜は、ナノ多孔性のダイヤモンド状カーボン(DLC, diamond-like carbon)からなる。











